乱暴をしてしまう子

佐々木正美

友だちに乱暴してしまう子は乱暴された子よりもずっと傷ついているのです

 いじめられて泣かされている子と、その子をいじめている子がいる場合、大人がしっかりと保護すべきなのは、いじめている子のほうです。
 たいていの場合、大人はいじめている子のほうを注意したり叱ったりし、いじめられている子を保護します。でも、これを続けている限り、いじめっ子は変わりません。

 私はいつも、保育園などで誰かが誰かに乱暴したときには、担任の先生がいじめている子をケアする側にまわってくださいとお願いしています。いじめっ子を黙って抱っこしてください、そして「あなただって悲しいよね」と言ってあげて、「もうしないんだよね」とはけっして言わないでくださいと言っています。いじめられた子は、補助の先生でも大丈夫です。

家庭で親にしっかりと受け入れてもらえている子は友だちに乱暴などしません

 人はまず自分が受け入れてもらってからでないと、相手の言うことを受け入れられないものです。それに、だいたいは自分が悪いことをしているとわかってやっています。わかっている子にあれこれ言っても意味がありません。

 それは家庭でも同じです。わが子が友だちをいじめていると知った場合、親はだいたい厳しく叱るでしょう。誰かをたたいたと聞けば、同じようにたたいて「痛みを教えている」と言う人も多いと思います。けれど、この方法ではいじめっ子は変わらないのです。あえて言いますが、いじめっ子というのは親にいじめられている子がなるのです。いじめっ子は、自分が親に愛されている、大切にされているという実感が乏しいのです。日頃から、親に自分の言うことを聞いてもらっていないのかもしれません。自尊心を傷つけられているのかもしれません。

 事態を改善するためには、親が「あなたがどんな子でも、私はあなたを愛しているのだ」と伝えなくてはなりません。けっして「いじめるのをやめないと、愛さないよ」という態度をとってはいけないのです。

ひよこ

親が頭を下げる姿を子どもに見せる。そのあとはもう責めない

  子どもが人様に迷惑をかけるような行動をした場合、子どもに謝らせるのではなく、親が頭を下げなくてはいけません。小学生くらいまでは、子どもの不始末をわびるのは親の仕事です。親がそのように育ててしまったのです。

 いじめではありませんが、私の息子たちも一つや二つ不始末をしでかしたことがあります。そんなときは、息子を連れて相手の家に行き、私が一生懸命におわびしました。許してもらえたら、もうそれ以上子どもを責めません。「許してもらえてよかった」でおしまいです。私は、こういう場面こそチャンスだと思っていました。「一人前になったら、おまえもこのようにわびるのだ。そのときまでは、父がおまえのかわりにわびるから」と伝えられたと思っています。

 親に自尊心を守ってもらえた子どもは、自分には価値があることを知ります。自分を大切だと知ります。そういう子は、悪いことはできなくなるんです。叱るだけでは何も変わらないことを、どうぞ知ってください。

佐々木正美著「ママの心がふわりと軽くなる子育てサプリ」主婦の友社より