子どもに寄り添うということ

佐々木正美先生に子どもへの寄り添い方をうかがいました

聞くことと話すこと

■聞くこと


私が精神科医としての訓練を受けているころ、指導医がよく言いました。
「患者さんの話をちゃんと聞けるようになったら、ほぼ一人前ですよ」と。


そのとおりだと今でも思います。患者さんに有益なことを伝えるよりも、患者さんが何を言いたいのか聞くほうが難しいのです。そして患者さんの言葉を聞けない医者が「ああしなさい、こうしちゃダメ」と言ったところで、患者さんには届かないのです。親子に限らず、人間関係は、多くの場合そのようなものではないでしょうか。

子どもが話しかけてきたら聞いてあげてください。長時間でなくてもいいし、家事をしながらでもいい。イライラせず、穏やかに、うなずいて聞いてあげるのです。それだけで愛情が伝わります。


また、お母さんから「今日の晩ごはんは何がいい?」「おやつは何がいい?」と、聞いてあげてください。子どもはハンバーグとかスパゲッティとか好きな食事を言うことが多いでしょう。特別にぜいたくな食事である必要はないのです。「今日は材料がなくて作れない」という日もあっていいのです。親に希望をかなえてもらえることが大事なのです。それを積み重ねるうちに、親の言葉も聞いてもらえるようになるものです。

苦もなく子育てしているように見える人は
子どもの話をよく聞いているものです。
人は誰でもそうですが
自分の言うことを聞いてくれた人の
言うことを、よく聞くものだからです。

■話すこと

子どもの話はどれだけ聞いてあげてもいいのですが、親の思いを話すことは、極力控えめにするのがいいですね。多すぎると薬と同じで、副作用が出てしまうのです。

親というものは、わが子に「こうしてはいけない」「こうするといい」ということを言いたくなるものです。”正しいこと”を教えたくなるのですね。

親の思いを子どもに伝えることは、けっして悪いことではありません。でも、あまり言いすぎるとそれは「いまのあなたではいけない」「私はもっといい子を望んでいる」というメッセージとなって子どもに届き、自信を失わせてしまうのです。正しいことは、小出しがいいと思います。

意欲的に動こうとしない子、自分に自信がない子、欲求不満がたまっている子の親は、こまかいことから大きなことまで、日々あれこれ子どもに伝えていることが多いものです。そして自分は言いたいだけ言って、子どもの話をあまり聞いていないものです。聞くのは、どれだけ聞いてもいい。けれど、話すのは極力少なめに。そう心にとどめておくといいですね。

親の思いのようなものを
子どもに伝えるときには
“量”に注意が必要です。
正しいことは多すぎず
適量を考えて話すことです。