■子どもを支えること

 
 反社会的な行動を始めとする様々な子どもたちにたくさん会ってきました。そのような子どもたちは、挫折感や、あきらめ意識で未来への展望を持てないでいます。「頭悪いし」「何やってもできないし」「ダメ人間だから・・・。強い自己否定感で、こんな自分だから嫌われてもしょうがない、親から愛されていない、愛される価値がないと感じていることがあります。

 親にとっては愛するわが子なのですが、親の愛は得てして身勝手な場合があります。しばしば叱られ怒鳴られ、皮肉を言われ、ため息をつかれ、励ましの言葉がありません。そのため子どもは自分が親から支えられているという実感を持てないでいることがあります。親の愛がうまく伝わっていないのです。子どもはとても自尊心が傷つき無価値感にとらわれ、時には自殺未遂をするなど様々な行動へと発展することがあります。

そのような子どもには「私は愛されている」「いなくてもいい人間ではない」、そのように感じてもらうことが大切になります。

 私は長年の思春期相談で、親の愛を感じてもらうことの大切さと同時に、愛情表現の難しさをも感じています。

 子どもがとても難しくなった場合、間接的ではなく母親の気持ちを直接「ことば」で表現してもらいます。そうでないと子どもに伝わらないことが多いのです。

  例えば「あなたのことが大好きだよと言って下さい」と母親にお願いすることがあります。

 母親は、はいわかりましたと快く返事します。ところが、2ヶ月たち、3ヶ月たってもなかなか言えません。そして大好きと言えないので「とても大事だと思っている」とか、「宝物だよ」はダメですかと聞いてきます。とても照れくさくて言えないのでしょう。また問題行動による迷惑感や困り感が昂じて、母親の被害者的な思いが強いからかもしれません。

 そう聞かれると、私は「ダメです」、はっきりと「大好き」と言って下さいとお願いします。すると多くの母親は「うちの○○ちゃんには、一日に何度でも大好きと言えるんですが・・・。」「子どもには難しいですね」と考え込むのです。

 ○○は犬の名前です。ペットには大好きと何回も言えるのですが、子どもには言えないのです。これでは、ペットの方が愛されていると子どもは思ってしまいます。

  また、登校や外出時に「行ってらっしゃい」と軽く肩をポンと触れて下さいと時々お願いをします。それもできない母親も少なくありません。愛情表現の難しさ、今までのコミュニケーションの貧しさを象徴しているようです。

 さんにも「大好き」と言って下さいと頼みました。子どもは、毎夜2時3時まで夜遊びしている中学生です。小学生の頃は、大人になったらお嫁に欲しいと近所から言われるくらい、いい子でした。

 何ヶ月もたち、ほとほと手を焼いて困ったさんは、ベッドで横になっている子どもに、背中から「○○のこと、大好きだよ」と言ってみました。子どもは驚いた様子で、背中がすこし震え涙を流しているのが分かったとさんは言っていました。
 この後さんが叱責をやめて穏やかに接するようになってから、子どもはやがて落ち着いていきました。

 私は子どもと接するとき「君の味方になるからねといつも言います。私は嫌われているわけではない、無価値な存在ではないと、愛されている私を発見することができて、子どもは生き直しができるようになるのです。

 「大好き」、普段はそのよう言葉はとりたてて必要なく、日々の生活の中で子どもは様々な愛情を感じていることでしょう。でも何か子どもが落ち着かないようでしたら「あなたが大好きよ」と口にしてみましょう。すると親は味方なのだと子どもは安心できて自信を取り戻し、生活を立て直していくことでしょう。

 思春期には、口答えや反発をする反抗期の荒れを親がしっかりと受け止めながら、子どもたちが自分の中に自分を支え励ましてくれる大人の存在をしっかりと確認できるようにサポートしていくこと。それが大人の努めではないかと思っています。

2012年   高橋健雄

 

 

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