相性の悪い子

■子どもをありのままに認める

■相性の悪い子

  子どものありのままを認めて、それに満足をしてやることは、なかなかむづかしいものです。しかし、子どもが自らの能力を最もよく発揮できるのは、基本的には自分の個性や資質などの人間としての個人的なありようを、親にそっくりそのまま容認されている場合です。

  それと反対に、子どもが萎縮して、本来もっている能力さえ発揮できなくなってしまうのは、親にこんな子どもでは困ると思われている場合です。

  親は子どもの将来を案じて、いろいろな個性的な能力をひき出して育ててやりたいと思うのは当たりまえのことなのですが、親が期待するような個性や能力を、どの子どもも持っているわけではないのです。

  子どもが3人も4人もいるとよくわかりますが、同じ両親から生まれても、一人ひとりそれぞれちがった個性をもっています。だから楽しいわけですが、時としては親は身勝手なもので、親にとって不都合に思える性格の子どもには、同じように可愛がって育ててきたのにこの子だけ…と考えがちになります。親も好きな性格とそうでない性格のようなものがありますから、よほど気をつけていませんと、知らず知らずのうちに子どもに差別的に当たったり、子どもの個性や資質に合わないような過剰な期待をしてしまったりします。

  そこでものは思いようですが、どの子どもにも必ずよい面と悪い面があるという古今東西の普遍的な真実を思い出してみるとよいと思います。子どもにとって不幸なことは、そのだれにでもあるその子のよい面を、親が好まない場合です。親がもっとちがったタイプの長所を欲求しているような場合です。しかしこれは親の身勝手というものですから、必ずある子どものよい面を発見する努力は、怠ってはならないと思います。親になった人の最低限の義務ともいえることでしょう。子どもは親にしか似ていないのです。

 

■どの子にもある長所と短所

  子どもに限らず人間の長所と短所は背中合わせのように対になっています。だからどの子にも長所があるといえるのです。

  素直な子どもは素晴らしいと多くの人が思っています。たしかに素直な心は素晴らしい長所です。ところがちょっとよく考えてみますと、素直さとはまわりの人の言いつけによく従うという面をもっています。口応えや反抗をしないという性質に共通する面もあります。ですからうっかりすると、周囲の人の考えにふりまわされて、自主的な判断や行動ができないという性格につながることがあります。強い個性や忍耐力を必要とする職業についている人には、しばしば一匹狼のような非協調性を特徴とする性格タイプの人がいます。芸術家やプロ野球の名投手などのなかには、周囲から一般には歓迎されにくい性質の人が少なくないのです。

  このように、どんな長所もちがった見方をすると必ず短所になり、どんな短所にも長所としての側面があるのです。子どもを育てる人は、親でも教師でも、基本的にはものを善意に長所側から見ることのできる人でなければならないと思います。短所に見える部分の修正は、その子どもの長所をよく知っている人、よい面のよく見える人が行った時に、最もうまくいくのです。

  子どもにとって、自分の価値やよい面をよく知っていてくれる人が、あれこれ注意したり叱ったりしてくれる場合には、それほど不快ではありませんし、だいいち自尊心を傷つけられることがありません。

  子どもの長所をよく理解し、ありのままの状態をまず許容することなしに、子どもを養育したり教育したりすることはできないのです。不登校、家庭内暴力、非行、自殺などの問題をひきおこす子どもの生育史には、まず身近なおとな(親や教師)に、子どものもっているよい面が充分に発見されていないという悲劇的な色彩が色濃くあるようです。

 

 

子育て協会「コミュニケーション」Vol.34より

 

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copyright  佐々木正美