佐々木正美 地域社会 

 

■地域社会

 子どもは自分の親が信頼を寄せ合っている人の手で育てられることが非常に大切です。しかし、自分の親が親しい交わりをしていない人たちの中にいるのは、大変不安なようです。

 前回述べたように、祖父母とのかかわりにおいても、親と仲良くしていることが感じ取れて初めて、子どもは祖父母に育てられることが喜びになります。

 地域社会の人々が果たす役割も同じです。親が親しい交際をしていれば、それだけ近所の人たちは育児協力者としての価値を増します。

 生後七ヶ月前後をピークとする人見知りの時期が過ぎ去れば、子どもは親しい顔見知りの人が差し出す手の中に、喜んで入っていくようになります。近所の人々の愛情にはその場限りの気安さがありますが、それが予どもには大きな安心感を与えます。無条件に似た愛情だからでしょう。

 親と親以外の人が子どもに示す愛情の違いは、それこそ多種多様にあります。例えば親は子どもにチョコレートを与える場合、「食べ終わった後には歯を磨くように」と言います。虫歯を心配してやるのです。しかし、隣のおばさんはチョコレートをくれるだけかもしれません。

 歯を磨くように・・・という気遣いは母親だけのものかもしれませんが、子どもにしてみると、チョコレートを食べるたびに歯を磨かなければならないとしたら、チョコレートを食べる喜びは半減するかもしれません。虫歯を心配してくれた親の愛情が理解されるのは、ずっと大きくなってからのことなのです。

 やがて子どもは保育園、幼稚園、学校など子どもの社会へ入っていくことになります。近隣の人たちが注いでくれる無条件の愛情や好意に接しながら大きくなっていくことが、子ども社会での適応にどれだけ有益であるかは、言うまでもありません。

 

無条件の愛情を受けて自立

 

 地域社会のおばさんやおじさん、そして友だちと少しでも多く、親しく交わる経験を経てから、保育園や幼稚園などに通うことができたら、子どもたちは仲間と上手に遊べるでしょう。いじめや不登校といった不幸なことも無くなっていくと思います。

 保育園や幼稚園で、子どもが保育者たちに大切に育てられることが大きな意味を持つのは当然ですが、子どもたちはそれ以前に「僕だけ、私だけ」を大切にしてほしいという欲求を持っているのです。

 手どもは自分だけができるだけ無条件に愛されるという経験を土台にして、社会的自立への歩みを始めるのだということを、私たちは知っていなければなりません。

 

◎地域社会の人々が無条件に示す愛情を受け、子どもは自立への歩みを始める

 

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