■ペット願望

 保育園での子どもの遊びが変化してきました。ままごと遊び・家族遊びができなくなってきたのです。母親役を引き受けたがる女の子がいなくなり、父親役の演じ方が分からない男の子も多くなっています。

 保育者が誰かを特別に指名して頼みますと、あまり気が進まない様子で、子どもたちはそれぞれの役を引き受けてくれます。しかし実際に遊びが始まると、母親役の女の子は遊んでいる間ずっと、その役を演じる「家族メンバー」に指示や命令を出し続けることが多いのです。

 一方、父親役を引き受けた男の子はその演じ方が分からず、ぼーっと立ち尽くしていることが多い-といわれます。つい先ごろ、倉敷市の保育者との勉強会で教えられたことですが、父親役を演じることになった男の子は、遊びが始まるとすぐに「ぼくはゴルフに行ってきます」と言い残し、消えてしまったそうです。

 もはや今日、女の子にとって母親は、大きくなった時にあこがれる「モデル」ではなくなってしまいました。ましてや、男の子にとっての父親は、存在の意味さえはっきりしなくなっているようです。

 そして男女を問わず、多くの子どもたちが最も好んで演じたがる役割は「ペット」です。幼い子どもたちの目に映る、家庭内で愛されている高価なペットは「自分もあのように愛されたい」というせん望の的なのでしょう。

 ほんの10数年ないし20年前までは、ままごと遊びの主役は両親であり、ほぼすべての子どもが奪い合うようにして演じたがったものです。そして、犬や猫の役は最も嫌われ、特に小さな子に「オミソの役」などといって与えられたものでした。

 保育者がどうしても「人間」の役を引き受けてほしい-と頼むと、子どもたちは「お姉さん」か「お兄さん」役を選ぶことが多いようです。そして、ペットを散歩させる役が人気だとも教えられます。

 少年や青年が自立的な生き方をするために欠かせないアイデンティティーを確立するためには、何が必要なのでしょうか。私と一緒に学び合った学生が、卒業研究で高校生や大学生の協力を得て手掛かりをつかみました。

 それは「大きくなったら父親や母親のようになりたい-という気持ちを、一度だけでも幼少期に抱くことが大変有意義」というものです。子どもの養育に当たる人は、こうしたことを心に留めていただきたいと思います。

 

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copyright  佐々木正美

 

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