■発達のすじみち

 子どもは一人一人異なる個性的な存在です。ですから、発達や成長のしかたもみんな違っていて定型はありません。しかし基本的なすじみちはあります。それは赤ちゃんの運動発達と同じようなものです。

 首がすわる前に寝返りを打つ赤ちゃんはいませんし、寝返りを打つ前に「はいはい」ができる子もいないのと同じです。子どもが社会的存在としての人間に育っていくには、基本的な順序があるのです。

 赤ちゃんが生まれた時、たいていの場合、最初に出会う人はお母さんです。その母親に愛情いっぱいに育てられることによって、赤ちゃんは母親やそのほかの人を信じることができるようになります。

 人を信じることができるようになった子どもは、親や、そのほかの人からしつけや教育を受ける心の準備ができるようになります。衝動や欲望を自制する「自律性」の基盤を身につけるためです。

 自律性が身につくにつれて、子どもたちは友だちと遊べるようになります。そして積極的に探索的な遊びを繰り返しながら、協調性とともに自主性や主体性といった、個人としての「私」になるための過程を歩むことになります。

 やがて子どもは、学童期を迎え、友だちから学ぶ喜びや友達に教える誇り、感動を体験します。さらに高学年になるにしたがって、互いに価値観を共有し合える友人を選び、アイデンティティ(自己同一性)を形成していきます。これは社会人になるための準備、過程です。

 

 

 子どもに限らず、人間が幸福に健康に生きるためには、成長や発達の各過程でそれぞれ信じることができ、共感し合える他者(家族や友人)が必要です。同時に、子どもを育てている人たちは親であれ、教師であれ、自分が信じることができる人の手を借り、互いに共感し合って育児や教育に当たらなければならない--ということなのです。

 子どもを育てるということは「人といきいき心を響かせ合って生きられるように育てる」ことを指します。子どもが日々、幸福そうにしている様子を見ることが幸福である-というような生き方を、私たちはしてみたいと思います。

 同時にそれは、親が「この子の笑顔は私が作ってあげる」という自負心を持つことに、自分の喜びを共感できるような生き方でもあるのです。

人間が幸せに生きるためには、成長の過程で信じることができる家族、友人のと出会いが欠かせない

 

 

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copyright  佐々木正美

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