しつけの質問箱

 

言葉が出ない

 

 Q 全くといっていいほど、言葉が出てきません。耳もちゃんと聞こえているし、運動能力も普通です。どうしたら言葉が出るようになるのでしょうか。

 

A 言葉というものは、親や専門家が訓練して「教える」ものではありません。毎日の生活の中から様々な体験を通じて、子ども自身が獲得していくものです。言葉を無理に話させようと教育するのは間違いです。言葉よりもまず、子どもとの楽しいコミュニケーションをできるだけ多くするよう心がけてください。例えば、遊びやおやつ、お風呂などを通して楽しい気持ちを共有し合い、自然に気持ちが通い合うようなやりとりをたくさんするといいですね。

 言葉が遅いという悩みは、原因もよくわからなかったり、周りの人からお母さんの育て方のせいにされることもあったり、親にとっては深刻な問題でしょう。しかし、育て方の問題では決してありません。子どもの側からのサインが乏しく、子ども自身が周囲の刺激を受けにくく生まれているということもあります。言葉のないうちから、子どもの欲求を親が察して、満たしてあげてください。自然にだんだんと子どもが表現しようとするのを、ゆっくりと待ってあげましょう。

 言葉の遅れの原因の一つに、何らかの発達障害があることも考えられます。言葉の発達が心配になった時は、何となく不安だからと先伸ばしにしたりせず、一度専門機関(小児科や言語治療士、保健所など)で相談するのがいいと思います。

 回答者 佐々木正美(精神科医師)

 

トイレット・トレーニングがうまくいかない

 

 Q トイレット・トレーニング中ですが、便器に長く座らせても、パンツをはいた途端にオシッコをしたりしてしまいます。この頃は便器に座ることさえ嫌がっているのですが。

 

A オムツを早くとってしまおうと焦ることは禁物です。きちんと排泄ができるまで長時間座らせるのはよくありませんね。慣れないうちは失敗するでしょうが、決して叱らないことです。オムツがとれる時期の二歳前後までには、膀胱や肛門の括約筋と呼ばれる随意筋を自由に操られるようになってきます。だからといって、いわゆるトイレット(排尿便)が自立するわけではありません。知能と共に情緒の発達が必要なのです。

 この時期の子どもは、自分が排泄するオシッコやウンチを、決して汚いものとは思っていません。むしろ自分の身体の一部として、愛しいものなのです。一方で、子どもはオシッコやウンチをした後の爽快感も実感するようになります。捨てるべきか、捨てざるべきか。子どもが二者択一を迫られる人生最初の選択が、トイレット・トレーニングなのです。

 排泄とは、あくまで生理的で心地よい体験だと感じる習慣を身につけさせてあげたいもの。ちゃんとここにするんですよと教えてあげて、便器でオシッコをすることができるのを叱らずに待ってあげるのがしつけです。大切なオシッコやウンチだけど、捨ててもいいやという気持ちがゆっくり育つのを待ってあげられる育児、それがその後の子どもの自律心や自主性を育てるための原動力になるのです。無理強いして排泄に不快感を抱いてしまったら、その後の自律心の発達を傷つけてしまいかねないということを知っていただきたいと思います。

回答者 佐々木正美(精神科医師)

 

おもちゃの貸し借りができない

 

 Q 公園でのおもちゃの貸し借りのトラブルで、親がつい口を出してしまいます。友達のシャベルを離さなかったり、おもちゃを全部かかえこんだり。どうしたものでしよう。

 

A 子どもがおもちゃの貸し借りを理解するまでには、かなりの時間がかかるのですよ。赤ちゃんから四歳ぐらいまでの子にとっては「自分の周りにある物はすべて自分の物」といった概念で自分の思い通りにして遊ぶことから始まります。おもちゃでひとり遊びができるようになって満足感を得るわけです。ちょうど何にでも好奇心が強い時期は、自発性やことばなどの成長のために大切といえます。公園でのびのびと元気に遊ばせているのはよいことだと思います。

 そこでおもちゃの取りっこや友達の使っているものを欲しがって、大泣きしたり噛みついたりする感情の爆発がでてくるのです。子どもにとって「思いやり」や「譲り合い」の勉強ですから、お母さんがあまり強く指図しないで、危険のない限り見守ってあげるようにしてください。「ちょっとだけ貸してね」「ありがとう」「貸してあげようね、どうぞ」などとお子さんの行動にあわせて代弁して表現してあげることで、そんなお母さんを真似て貸し借りができるようになっていきますし、同時に思いやりも育つのです。

 友達と仲良く遊べるようになるための準備段階ですから、しかってしまう前にお子さんが自分なりに行動をコントロールできる力が身につけられるように手助けをしてあげましょう。社会性の育ち始めですからお母さんは焦らずにつきあってあげてください。

 回答者 井上ま津江(子育てコーディネーター)

 

 

友達をたたいてしまう

 

 Q 買い物などで見かけた同じ年齢ぐらいの子に寄って行ってはたたいたり、すべり台の上でも友達をたたいてしまいます。危ないのでつい強い口調でしかってしまいます。

 

A お子さんが周囲の人に対して関心を向け始めたのですね。知らない子に寄っていくのは「お友達になりたい」「仲良くしょう」というサインでしょう。この時期の子どもは同年齢の子ども同士の遊びの中で、自分ではできないことをやってもらったり、相手の反応からたくさんの刺激を受けたりして対人関係を学んでいきます。日常行動では「自分でやりたい」「自分が先にやりたい」などと願望をはっきり主張します。お子さんの気持ちを大切にし、お母さんは認める、励ます、ほめるを心掛けて接してあげましょう。どんなことでも失敗を繰り返しながらできるようになることで、頑張るという尊い経験を身につけていくのです。

 遊びは必ずしも仲良く協同で譲り合うというばかりではありません。順番の争いやケンカ、競争などが必ずおこりますが、これらは重要な社会的行動なのです。もちろん危険を伴う場合には、しかることも必要ですが、お母さんは、お子さんが仲間とのトラブルを通してがまんして譲ることや自分の思いを伝えることなどの社会性を学んでいることを理解してあげましょう。親の愛情と適切な世話を受けた子どもほど、仲間に関心をもっていきます。何度でも同じことをくりかえしていることは、心の発達状態が健康かどうかをみるポイントなのです。様々な人との出会いと体験を数多く得ることが、お子さんの将来にとっての人格形成には欠かせないことですから、長い目で育んでまいりましょう。

回答者 井上ま津江(子育てコーディネーター)

 

佐々木正美 監修 ゆめこびと 編・著 
−子どもの心を育てる−「しつけの本
 子育て協会より

 

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