子どもの発達とテレビ
 

 

テレビの画像 

 カラーテレビとともに育った「テレビ第一世代」が親になっている今、赤ちゃんは生まれた時からテレビがつけっ放しという生活環境で育っています。さらにビデオやテレビゲーム、パソコンなどの普及で、乳幼児が電子メディアの画面に向き合う時間はどんどん長時間化しています。今までテレビやビデオの問題と言えば主にその内容のことで、小学生以上の子どもたちが対象に論じられていましたが、最近では幼児教育の現場から、長時間のテレビ・ビデオ接触が、子どもたちの情緒、コミュニケーション、運動性などに影響を与えている、という報告が出され始めました。「表情が乏しい」「視線が合わない」「友達関係がもてない」といった、気になる子どもたちが増えているようです。テレビ・ビデオと子どもの発達との関係について、ご一緒に考えてみませんか。

 

乳幼児とテレビ ビデオとのかかわり 

 横浜市にある「日立家庭教育研究所」は、O3歳児の親子教室を開催しながら、子どもの発達や家庭教育のあり方についての研究を行っています。同研究所の主幹研究員(当時)の土谷みち子さんは、早くから、乳幼児期の子どもとテレビやビデオとの関わりについて着目し、開始時期や視聴時間と子どもの発達との関連性について調査をしています。最初の調査は、97年から3年間、神奈川県内に住む未就園の3歳児160人を調べ、その中で気になる子どもに対し、面接や観察を行いました。また、一昨年から2年間、神奈川県内に住む14歳の乳幼児180人に対してテレビ画面視聴に関する調査を行いました。こうした研究をもとに、テレビ・ビデオの視聴が子どもの成長・発達にどのような影響を与えるのか。そして、テレビ・ビデオとどのようにつきあったらよいのか、土谷さんにお話を伺いました。

土谷みち子氏に聞く

 メディアが発達している今は、子どもは赤ちゃん時代からテレビ・ビデオに接触しています。今までテレビ・ビデオについて暴力や性描写など、内容に関する議論はありましたが、見せ方についてはほとんど論じられていませんでした。私が1998年に発表した論文は、乳幼児期という、人間の発達の初期から過剰にテレビ・ビデオを見せることによって、何かが失われるのではないかという問題提起です。つまり間接体験と外遊びでの直接体験・実体験とのバランスが大きいと考えています。何が一番心配かというと、表情の乏しさやコミュニケーションです。つまり自分の感情を外に出したり、人のやっているものに共感して自分も楽しみたいという気持ち。対人関係の基礎となるものが乏しくなってくると感じています。これは人間の基本的な成長を脅かすことにつながっているのではないか。初期の体験があたりまえではなくなっているのではないか、と感じました。とは言え、まだ外国にも文献がほとんどなく、研究分野としてはこれからのものです。最近になってやっと、この乳幼児期からの見せ方の問題に社会的な関心が出てきたところです。

 

心配な見せ方とは

 

 私の問題提起は、テレビから発する強烈な光や音などの過剰な刺激が身体に与える直接的な影響ではなく、二次的な影響に関してです。つまり早くから長時間、一人で見ている生活は、外遊びや親とやりとりする時間を奪ってしまうのです。

 心配なビデオの見せ方は、@一人で見ている。A乳児期の初期から見る。開始が早い。B一回に長時間見ている。C巻き戻しをする。この4つが当てはまります。一生懸命に繰り返しいつも同じビデオを見ている、さらにDほとんど外遊びをしていない子が気になります。

 また最近多い見せ方ですが、添い寝ビデオ。自分の好きなビデオを寝ながら見る。そういうお子さんは心配です。自分で寝ようと準備して、心身を静めていく体のコントロールができないからです。この二次的な影響というのは怖いと思います。人と情緒的につながり、共感的なやりとりをするコミュニケーションスキルを低下させてしまいます。あたりまえに育つ人間の基本的な成長の部分が落ちてしまうと思うのです。

 

土谷(つちや)みち子氏

東横学園女子短期大学助教授(幼児教育・発達心理学)

(財)小平記念会家庭教育研究所・主幹研究員(2002年当時).著書:『子どもの発達と父親の役割』(共著,ミネルヴァ書房),『子どもとマスターする49の生活技術』(共著,合同出版)ほか

 

※この記事は、2002年度の「コミュニケーション」より転載しています。

 

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