子育て協会

 
 

 毎日毎日家事と育児に追われているお母さんたち。
子どもがかわいく思えない時だってあるし、ききわけがなければたたいてしまうことだってあります。親の感情で叱ってはいけないとわかっているのに、ついイライラ、カーッとなり子どもをたたいては自己嫌悪に。なぜたたいてしまうのか、どうすればイライラしないですむのか、子たたきの原因と対策についてじっくりと考え、叱りすぎからの脱出方法を一緒に探ってみませんか。

  

■ 子たたきはだれでもあること

 

 ある子育てサークルでの話です。

「私、夕べ子どもをたたいてしまったの」

「えっ、私もよ」

「たたいた後って、落ち込むわよね」

「そう、寝顔を見ながら謝ったりして…」

「いけないと思っても、ついたたいてしまうのよね…」

 こういう会話は、かなり親しい関係にならないと話されない内容だそうですが、最近こどもを叱る時の方法として“たたく”お母さんは増えているようです。虐待という問題が大きく世間で取り上げられるようになりましたが、その陰で、しつけという名分のもとで日常的に行われている“子たたき”について考えてみる必要があるでしょう。

 育児に追われる毎日にストレスを感じるお母さんはたくさんいます。神奈川県K市の私立幼稚園に通わせている4歳児のお母さん2,000人に行ったアンケートでは、子育てにストレスを感じるという人が、「非常に感じる」「時々感じる」人合わせて全体の9割以上にも及びました。ある育児雑誌が全国の1,000人のお母さんに行った調査では、たたいたことのある人は「時々」「ほとんど毎日」「毎日を合わせると70%。全くたたかない人はわずか3%で、97%の人はたたいた経験をもっていることになります。また、S市の公民館の講座に集まった15人のお母さんに「子どもをたたいたことがありますか」と尋ねたところ、全員が手をあげたという例もあります。

 神奈川県の中央児童相談所が行っているテレフォン相談「子ども・家庭110番」では、ここ1,2年、虐待や子たたきに関する相談がかなり多くなっているそうです。昔はごく一部だった虐待が、今では程度の差こそあれ、かなり裾野が広がり一般化しているとのこと。離婚や生活保護など、家庭環境が整っていない家庭ではなく、両親が揃い経済的にも特には困らないというごく普通の家庭で子たたきが行われています。特に、03歳の小さい子どもをもつお母さんの悩みが深刻だとか。

 今、子たたきは、だれもが日常的に直面している問題といえそうです。

 

なぜたたいてしまうのか                        

 それにしても、なぜたたいてしまうのでしょう。そしてどんな時にたたいてしまうのでしょう。藤沢市のお母さんの何人かにインタビューしてみました。(具体例 その中の代表的な例をまとめてみましたが、気になったのは子どものためというよりも、自分の感情を処理するためという人が多かったこと。そして、自分一人で悪戦苦闘している、孤独なお母さんが多かったことでした。

 今は「いい子に育てるためには」という情報が溢れています。それがプレッシャーとなり「子どものために」と必要以上に頑張るお母さんを生み出しているのかもしれません。子どもに期待をかけ、その通りにいかないとイライラし、それがたたく原因の一つになっている、と言えなくはないでしょうか。

 一方で、たたくのと反対に、育児を放棄してしまうお母さんも増えているそうです。

 「最近は、子どもの存在そのものを受け入れられないお母さんが多くなりましたね」と言うのは、育児教室や家庭訪問でお母さんと接する機会の多い、横浜市のある保健婦さん。

 「新生児訪問をすると、授乳の時間なのに飲まなかったからとか、面倒くさかったからといって母乳をあげない人がいる。飲まない赤ちゃんが悪い、自分は悪くないと思っているんですね。こういう虐待は相談にあがることはほとんどありません。でも赤ちゃんに手をさしのべるとビクッとする、体重が増えないなどの症状でわかるんです」

 母親自身が育っていないというか、思春期を乗り越えていないのです。人とうまくつきあえない。相手を受け入れられない。人間として成長する場がなかったのでしょう。たたかれて育ったお母さんは、同じようにたたいて子どもを育てますね。もちろんお母さん個人の問題だけではなく、様々な社会環境が母性の成長をむずかしくしていると思います。

 子育ては、人間対人間の営み。目の前にいるのは子どもと言えども、親の意思だけではどうにもできない一人の人間です。子育ては自分の思い通りにはいかないことに気づくことが第一歩。そのためには自分一人ではなく、地域やサークルなど、みんなの中で子育てをすることが大切ではないでしょうか。

    

■ たたいてもいい、それ以上かわいがって

  たたく行為は、確かにいいことではありません。なるべくたたかないような努力も必要でしょう。(先輩ママに具体的なアドバイスをしてもらいましたので、ご参考までに。)でもどうしてもたたいてしまうことだってあるし、それは仕方のないことです。要はそれ以上に子どもをかわいがってあげることでは。

 子どもがかわいい、だからいい子になってほしい。その思いがつい、たたくことにつながってしまう。決して子どもが憎くてたたくわけではないのに…。だとしたら、子どもに伝えるべきなのは、たたいてわからせる恐怖感ではなく、“あなたがかわいい”というメッセージではないでしょうか。

 今、家庭では、指示、命令、干渉を一方的に行おうとする教育型の親が増えているような気がします。家の中までがそういう雰囲気では、子どもは心休める場所がありません。親は保護、受容してあげる存在。否定的な言葉かけではなく、肯定的な言葉かけを行うことによって、子どもは自分を肯定し、自信をもって生きていけるのだと思います。

 「子どもを叱る時、何よりも注意しなければいけないのは、自尊心を傷つけないこと」と佐々木正美先生は言われます。「もし感情的に叱った場合は、すぐに仲直りをすること。逃げ場を作ってあげて追い詰めないこと。懲りるまで叱らないことです。叱られたことをずっとひきずってしまうことが核家族の最大の問題点。救いの手をさしのべてあげて下さい。家庭は救われる場所。安心できる心の基地、不安を解消する所なのです」。

 子どもをかわいがること。愛情をかけること。一番基本的で大事なことに、もう一度立ち返ってみませんか。

※具体例

*** 私はこんな時、たたいてしまいます ***

 

◎家が狭いためイライラすることが多い

 2DKのアパート暮らしなので、子どもが3人になって狭いスペースにイライラしています。長女が入学するのに机を置く場所がない状態。今、引っ越しできないので、とにかくがまんするしかありません。私自身もそうですが、子どもたちもストレスがたまるようで、兄弟げんかが多いように感じます。自分のイライラがピークになった時、子どもがさわぐと手がでてしまいます。(子ども/5歳、3歳、1歳)

 

◎姑との同居のストレスが、子どもに

 姑は何でも自分の考えを押し通そうとする人。子育でのやり方も口をはさんでくるので、本当に頭にきます。でも私は面と向かって反発することができず、ストレスの固まりに。夫も姑には何も言えず、そんな夫にも腹がたちます。結局そのはけ口が全部子どもに向かってしまうのです。姑に何か言われた日は、姑の見ていないところで子どもをたたいてしまいます。(子ども/6歳、2歳)

 

◎食べない子どもに腹が立つ

 3歳の長女は、食べものの好き嫌いが多く何しろ少食です。あの手、この手もうまくいかず、ご飯もおかずもほんの少ししか食べません。手間ひまかけて料理を作ってもペーッと出されるとついムカッとなってしまって…。「なんで食べないの?」と思い、無理やり食べさせると吐いてしまって。ますますカッとなって手がでてしまうのです。(子ども/3歳)

 

◎公園に行くとついほかの子と比較して

 3歳の長男は他の子のように元気に外で走り回って遊ばないんです。男の子なので、もっとのびのびと遊んでほしいといつも思ってしまいます。それを家にいる時はあまり感じないのに、公園に行くと周りの子と比較してしまって、なぜうちの子だけ…とイライラ。家に帰ってきてもその気持ちがおさまらず、必ず「どうしてもっと元気に遊ばないの!」と責めるようにたたいてしまいます。(子ども/3歳)

 

◎階下の人から苦情をいつも気にして

 子どもが生まれたので、広いマンションを購入しました。ところが階下の人がどうも神経質らしく、「子どもの足音がうるさい」と苦情を言ってくるようになったのです。なるべく昼間は公園などへ連れて行くようにしていますが、夜はどうしても響いてしまって。「静かにしなさい」とどなるのも声が気になって、結局たたいてしまいます。(子ども/2歳)

 

◎ささいなことで、怒りをぶつけてしまう

 私の場合、理由なんて本当にささいなことなんです。短期なせいか、ちょっとしたことでもカッとなってしまいます。例えば、牛乳をこぼしたり、ティッシュを全部引っ張り出したりするのを見た途端…。ひどく叱ってたたいたあと、どうしてこんなことでと悲しくなります。絶対によくないとわかっているのに、すぐにたたいてしまう自分をどうすることもできません。(子ども/3歳、1歳)

 

−たたいてしまうママへ−

○○○ 先輩ママからのアドバイス ○○○

 

●「たたかない」と文字にして貼る

 つい手をあげてしまった後、きまって後悔する私。ある日、いつも穏やかに育児をしているようにみえる、あこがれの先輩の家に招かれました。そこで、台所に「たたかない」というメモ書きがあるのを見つけたのです。あの人でも私と同じように育児の悩みがあったのか…と安心すると共に、さっそく私もメモを貼ってトライ。しばらく時間はかかりましたが、今はたたかなくなりました。今度は「どならない」にチャレンジしています。(T子さん)

 

●時計に動物の絵を貼り、わかりやすく

 娘は食事にとても時間がかかり、いつも私はイライラしていました。ある日、保育園に行った時、時計の文字盤に動物の絵が貼ってあるのを見て、これだとひらめきました。娘の好きなウサギ、リス、キリン、ゾウのシールを12時、6時、9時の位置に貼り、「時計の針がリスさんのところにいくまでに食べようね」というと、喜んで食べるようになったのです。口で言うだけでなく、視覚に訴えることが大切なんだと思いました。(Y恵さん)

 

●たたきたくなったら、別の部屋にいく

 妊娠中、体調が悪いうえに上の子のトイレットレーニングがうまくいかず、どんなことでも気に障って叱りまくっていました。ある時逆上してたたいた直後、隣の部屋で一人になったら気持ちが鎮まった。それ以来たたきそうになったら、子どもが目に入らない所に行くようにしました。ベランダとか、トイレとか。子どもから離れることで感情がエスカレートしなくなり、たたく回数も減りました。」(E子さん)

 

●親しい友人の子どもと一緒に過ごす中で

 新しい友人の家を行き来しながら気づいたのは、お互いの子どもに対する見方の違い。わが子には欠点として叱っていることを、友人の子には長所としてとらえていると気づいたのです。自分の子だけを見ているとわからなかったことでした。それから子どもをゆったりと見られるように。預け合いもできるし、子どもを遊ばせながら友人と一緒にお茶を飲めることもストレス解消になっています。(N実さん)

 ●家の中に鏡を増やして、顔を写すように

 子どもに「早く、早く」を連発することが多かった私。子どもが自分で支度をすると遅くてバスや約束の時間に間に合わず、いつもイライラしていました。私が手を出すと不機嫌になって、親子でムスッとすることもしばしば。たまたまそんな顔がショーウインドウに写って、ハッとしました。それから家の中に鏡を増やして、イライラする自分の顔が目につくようにしました。他人の目を意識することで自制がきき、たたく回数も減りました。(N子さん)

●自分の言った言葉をノートに書きとめる

 私は子どもにイライラした時、手はあげないのですが、言葉で子どもを責めたてていました。お友達の家に一緒に行った時のこと。息子が私と全く同じ口調でお友達を追い詰めている姿を見て、唖然となりました。はたからみれば、何とひどい言葉を投げかけているのでしょう。それ以来、自分が言った言葉をノートに書きとめ、客観的になるように努力しています。言葉による虐待は、体ではなく心を傷つけると思うようになったからです。(K子さん)

●夫にすべてを話し、ママの休業日をもらう

 いつも子どもに振り回されイライラしてばかり。そのピークがきてどうしようもなくなった時、夫にすべてをうちあけ自分の精神状態をわかってもらいました。夫もそこまで私がストレスを抱えているとは思っていなかったようです。いろいろと話をした結果、月に2回、ママの休業日をもらうことにしました。土曜日の午後にショッピングをしたり、美術館に行ったり、たっぷり息抜きをしています。(H佳さん)

 

●友人関係を拡げて、自分の方針を見直す

 私はたたいてでもきちんとしつける主義でした。自分の育児方針は変えたくないし、トラブルも起こしたくないので、同じ育児方針で子どもの年齢も同じというお母さんたちで公園のグループを作っていました。でもだんだん息苦しくなって、いろいろな人のいる別の育児サークルに入会したところ、もっと肩の力を抜いて子育てを楽しんでいる人たちと出会い、気負いが減って楽になりました。(S子さん)

※この内容に関する資料の問い合わせは、申し訳ありませんが応じておりません。

子育て協会発行、子育て情報誌「コミュニケーション」8号、1996より
子育て情報誌「コミュニケーション」は、子育て協会のコミュニティカレッジ会員に配布されております。

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