勉強に意欲をもてる子、もてない子
 
 

 

学ぶ子どもたち

 春の訪れとともにやってきた入学、進級の時期。新しい学校生活への期待と喜びで、親も子も胸をふくらませていることでしょう。その一方で「うちの子、学校でちゃんとやっていけるかしら」という不安や心配も…。勉強はもちろん、運動や遊びにも意欲に満ちた子になってほしい。それが親の願いです。ではどうしたら子どものやる気を育てることができるのか。子どもの意欲を引き出すかかわり方を考えてみませんか。

 

 

勉強ができる子はどんな子?

 ただ単に成績がいいというだけではなく、勉強をやろうとする子、学ぶ意欲のある子はどんな子なのか、また反対に勉強に意欲をもてない子はどんな子なのでしょう。県内の公立小学校の先生3人に聞いてみました。

 

 「例えば理科の実験で、磁石で砂鉄を集めるという時。ワクワク、ドキドキできる子、未知のものに期待をもてる感性のある子は学ぶ意欲がありますね。塾などに行っていて頭だけでわかっている子は、実験にのってこない。なぜだろう、やってみようと自分から思える子は成績がのびます。やりたいことをやらせてあげることが意欲に関係します。親が先取りしてやらせたことは、自信ややる気にはつながらないようですね」(M先生)。

 

 「勉強ができる子はどんなことでも興味をもっています。6年生ぐらいだと新聞も読むし、あらゆる情報をキャッチしようとします。今の子は枯れていて、感動することがない。仮死状態なんですね。美しい花を見た時に、まず感動できるかどうか。いろいろなことに喜んだり驚いたりできる豊かな心が、興味や意欲を高めてくれるのでは」(K先生)。

 

「自分の興味のあることに打ち込める子、また、自分の意見をみんなの前で発言できる子は、いろいろなことにやる気があります。意見を発言しなくても、みんなと一緒に何かができる、集団生活の中で協力し合える子は学ぶ意欲もありますね」(S先生)。

 

やる気はどこから育つのか

 どの先生も共通して、興味のもてる子がやる気があり、勉強もできると言っています。それでは勉強をやろうとする意欲は、どこからどのように育ってくるものなのでしょう。

 

 「子どものやる気」について、大変興味深いデータがあります。これは大阪の豊中市立教育研究所が調査したものです。市内の小学5年生と中学2年生の約800人にアンケート調査方式で行われました。過去に遡って回想する形で、約8年間の育ちの経過を見た調査です。設問の大意は、「父と遊んだか」「母にほめられたか」「どんな遊びが好きか」「友達がたくさんいたか」「どんな本を読んだか」など。各問の回答をクロス集計してみると、おもしろい結果が浮かび上がりました。

 

 「就学前、母とよく遊んだか」との問いに「熱心に勉強するか」という質問の回答をクロスすると、「熱心に勉強する」と答えた小学生の75%、中学生の50%の子が「母と遊んだ」と回答。一方、勉強の時「気が散る」と答えた中学生の70%が、「幼児期に母と遊んでもらえなかった」と答えています。

  他にも、「幼児期に母とよく遊んだ子は進んで質問する」「父・母とよく話す子は、勉強のことも話す」「家で勉強のことを話す子は、勉強すればわかるようになると思っている」など、興味深い相関関係が浮きぼりにされています。

 このようなことから、幼児期の家庭での基本的な生活体験や親子のふれあいが、後々の子どものやる気(自己教育力)を育てていることがわかります。また例えば、「幼児期に本を読んでもらった子はわからないことを自分で調べようとする」という結果は、幼児期の本とのかかわりの大切さを語っています。

安らぎのある家庭がやる気を育てる

 

 勉強の好きな子になるか、嫌いな子になるか。そのキーポイントの一つが親子のコミュニケーションの仕方にあるとすれば、家庭でどのようなことを心がけたらよいでしょうか。

 

 「学校の勉強で大切なのは、授業をきちんと聞けるかどうか。席についていられない、落ち着かない、話を聞けない子が増えています。人の話を聞けない子は、自分の話も聞いてもらってないということ。聞く力を育てるには親子の対話の積み重ねが大切ですね。また、やる気のある子は自信をもち、生き生きとした表情をしています。自信のない子は心が不安定で、とても心配症です。親が子を受容し、上手にほめて認めてあげることで自信とやる気を持つようになるのではないでしょうか」(M先生)。

 

 「低学年のうちはまだまだスキンシップが大切です。一緒に遊んだり、兄弟と離れて1対1で向かい合う時間をつくるように心がけてみては。時間的には短くても、子どもの欲求(例えば話を聞いてほしいなど)に応えてあげるだけのゆとりをもつこと、子どもの心が開くタイミングやサインを逃さないことが大事だと思います。学校は集団生活の場所ですから、子どもは我慢したり頑張ったりしがち。家でそのストレスを発散できるよう、なごやかな場所づくりをするといいですね」(S先生)。

 

人間関係の中で生き生きとできる子に

 

 親はつい子どもに勉強をさせようとして先走り、より早い時期に何かを教えようとしたり、勉強の習慣や環境づくりばかりを考えてしまいます。しかし勉強の知識云々を言う前に、親子の、また他の人との信頼関係はどうでしょうか。

 

 物質的に恵まれてはいても、仕事や環境、人間関係などいろいろなストレスに囲まれ、心の悩みも多い現代人。会社や学校、社会にうまく適応できない、人間関係にプレッシャーを感じるという悩みをもつ人も少なくないでしょう。リラクゼーションの音楽CD、自己肯定や自己発見の本、アロマテラピー関連グッズなど、自宅で疲れた心と体をケアする「癒し」の商品がもてはやされています。

 

 児童精神科医の佐々木正美先生は、「小さい頃から人間関係を楽しめる体験がない子どもほど、攻撃的になります。  ストレスを生むのは人間関係の中ですが、解消するのもその中です。 人との関係の中で安らげるというのがいいのです。」と言われています。人に対する信頼の感情、人と喜びや悲しみを共有し合う人間らしい感情は、幼児期にこそ身に付けなければならないもの。心を癒してくれるのは商品ではなく、生きた人間関係なのでは。

 

 成績がよくなくても不幸にはならないでしょう。でも人間関係がよくないとどうでしょうか。よい成績をとるために失っているものはないでしょうか。佐々木先生も、「不登校の子の場合は、人間に対する不信感が根底にあります。勉強はむしろできる子が多いのですが、できるという背景には何を代償にそうなったのか。何を犠牲にして勉強してきたのかを考える必要があるのでは」と語っています。

 明るく楽しくくつろげて、笑いのある家庭。地域や社会とのかかわりが豊かな家庭…。「笑いのあるクラスは成績ものびますね」というのは、北形勇人先生。人間関係の円滑油の役割を果たす“笑い”は、病気の治療などにも効果があることが科学的に証明されています。子どもは家庭や友人との安定した関係の中で、興味や意欲などの目には見えない力をつけていきます。

 “知る”ことは自分の世界を広げてくれること。知らないことを知ることが楽しいと思えること、それが勉強の喜びへとつながっていくのです。子どもにたくさんのことを望む前に、親と子のあり方、かかわり方をもう一度ふりかえってみませんか。

 

 

先輩ママに聞く〜わが家の場合〜家庭での勉強はこんなふうに

 

@子どもの質問にきちんと答える子

 

こどもに質問されてわからない時、「わからない」と言うのは抵抗があるもの。親としての体裁もあってお茶を濁してしまいがちです。でも子どもがなぜ?と聞いてきたときがチャンス。わからなくても子どもと一緒に辞書をひいたり調べたりして、答えを探すように努力しています(子ども/5歳)

 

A本の読み聞かせでふれあいを

 

仕事をしていて子どもとゆっくり接することができないのがずっと悩みでした。少しでも親子でふれあう時間を持ちたいと、本の読み聞かせを再開しました。小学生になり自分で本が読めるようになったわけですが、いくつになっても生の声で本を読んでもらうことはとってもここちよいようです。子どもは何となく落ち着いてきたように思います。(子ども/7歳、3歳)

 

B 先生のイメージを大切に

 

 一年生の娘は担任の先生が大好きで、とても尊敬している様子。大好きな先生から学ぼうとする意欲が感じられます。子どもの前では先生の批判をしたりして先生のイメージをこわさないように、親同士の立ち話や電話などにも気をつけています。これはもちろん父親イメージに関しても同じです。(子ども/7歳、5歳)

 

C 友達と一緒に勉強ごっこを

 

一人で勉強する習慣をつけるのはなかなかむずかしいもの。友達とワイワイ一緒なら、抵抗なく宿題をやったりできるので、近所の子どもたち数人と週に2回集まって勉強ごっこをやっています。場所は各家庭を持ち回りにして。子どもの年齢はまちまちなので、大きい子が小さい子に教えてあげたりしています。親が口出ししなくても、子ども同士のかかわりの中で学べるのがいいと思います。(子ども/9歳、7歳、4歳)

 

 

コミュニケーション9号より

 
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