子育ての“イライラ”と、 どうつきあっていますか

                              だれもが感じる育児のストレス

 

 

子育てのイライラ

 

写真 母と子毎日毎日くり返される子育て。子どもが成長する喜びはあるものの、どうしてこんなにイライラするのだろうと思うこともしばしばです。「こんなにイライラして、私って母親失格じゃないかしら」と一人でくよくよ悩んでみたり…。

 子育てとは切っても切れないイライラ。いったいこれはどこからくるものなのでしょうか。イライラとうまくつきあう方法を一緒に考えてみませんか。

 

子育ての重圧がすべて母親の肩に

  核家族化が進む現代は、今までにない新たな子育ての悩みを生んでいるように思えます。夫不在の毎日の生活の中で、子どもとばかり向かい合うことを余儀なくされる専業主婦の母親。育児と仕事を両立させようとしても、幼い子を預ける社会的な環境が不十分の上、「子どもがかわいそう」という見方もまだまだ強い世の中。「母親だけが子育てをするもの」という社会通念は根深いのです。

 子どもはじっとしていないし、うるさくて当たり前なのに、放置していられない住宅事情。足音や泣き声が近所迷惑とされてしまう現代では、子ども本来の欲求も押さえざるを得ません。外へ連れ出せば、車が危ない。舗装された道路では、転ぶとすり傷も大きい。ガラスのかけらやゴミ、犬のフンに至るまで母親は子どもから目を離すことができない状態にあります、また、やむなく出かけなければならない銀行や買い物、親の通院など、子連れの外出には本当に多く気を使います。

 このような子育てが疲れないはずはなく、しかも何もかも母親の責任が問われるのですから、子どもを産むこと自体をためらう傾向があって当然なように思います。子育てにストレスはあって当たり前。なければおかしいといっていいくらい、現代の社会には大きな「ひずみ」が生じていると言えるでしょう。

 

■幼稚園の母親と保育園の母親を比べてみると

 ここに、ストレスに関する興味深い調査結果があります。

 ストレスをテーマにしたフォーラムが過日、厚木市の母親たちの手によって行われました。幼稚園と保育園の母親たちが協力し合い、幼児をもつ市内の母親600人にアンケート調査を実施しました。その結果、幼稚園と保育園との母親像の違いが浮かび上がってきたのです。

● 子育てでストレスを感じると答えたのは、両者とも「非常に」 「時々」合わせて9割にも。

● ストレスの内容は、保育園で@仕事(55%)A子どもとの関係(27%)、 幼稚園で@子どもとの関係(43%)A健康(26%)の順で、子どもとの距離感に差が見られる。

●解消の方法は多い順に、保育園が@夫と話す A趣味 Bショッピング、幼稚園では、@夫以外のだれかと話す A夫と話す Bショッピング。夫との関係にも差が。

●家族揃って夕食を食べる回数は、保育園が週7回(毎日)が最も多いのに対し、幼稚園では週2回(週末だけ)が最も多い結果となり、働いている母親の多い保育園の方が家族とのコミュニケーションを多くとる努力をしているよう。

●自分自身の中で、妻・母・私・嫁・仕事の五つの役割の比重を大きい順に並べると、保育園では「母」を第一にあげた人が48%「仕事」を第一にあげた人が42%と、ほぼ半分ずつ。幼稚園では、「母」としての自分を第一にあげた人が84%にものぼる。

●一方、理想とする順位は、最も多かったのは保育園では「母」が57%、「私」が25%に対し、幼稚園では「母」が50%、「私」が36%と、幼稚園の母親の方が「私」として生きたいという願望が強い。

 

  ■専業主婦の母親に多くのストレスが

 回答者は、働いている母親が保育園で93%(全員が週4日以上勤務)、幼稚園で18%(半数が週3日以内勤務)であることから、働いている母とそうでない母の像の大まかな比較ができるといえるでしょう。

 働く母親の方が、育児と仕事との両立で葛藤し、自分の時間をもてないでストレスを多く感じるようにみえますが、こうしてみると意外なことに、働かない専業主婦の方が多くのストレスに取り囲まれているようです。

 原因の一つは“夫との関係”でしょうか。相談相手や夕食を食べる回数から見ても専業主婦の家庭の方が、妻が家庭にいるという安心感からか「夫不在」が目立ちます。妻が仕事をしていれば夫も家事や育児に協力することが多くなり、共に子育てしている連帯感が生まれますが、物理的にも精神的にも夫不在では妻は子どもと一日中向き合ってどんどん癒着し、その悩みも深まるように思います。

 また、育児に専念できるという時間的な余裕は、育児についての知識を得る時間を増やし、よその子と比較したり自分の育児を疑うきっかけを作るとも言えそうです。あふれるばかりの情報が蔓延する現代では、情報の選択肢が多すぎて、惑わされてしまうのです。

    

■虐待へと追い詰められる母親たち

 そんな中で今社会的にも問題になっているのが、虐待の問題。きっかけはほんのささいな日常的なことからで、原因の多くは母親のストレスと言われています。一言で虐待といっても、明らかに暴力的なものから、外からはわからない小さなものまで実に幅広く、母親であればだれでも陥る可能性のある問題です。

 虐待の行為そのものは別として、原因となるものには「思い当たる節がある」「他人事ではない」と思う人がほとんどでしょう。イライラを解消する場や仲間がなくて、そのほこ先を子どもに向けてしまう虐待。なぜ母親たちは今、ここまで追い詰められているのでしょうか。気持ちを切り替えていったり、「苦労は買ってでもしろ」という言葉のように、今の苦労は自分の器を大きくするものと考えきたのではありません。結婚、出産後の生活が今までとあまりにもギャップが激しく、一方では「母親とはかくあるべき」という固定観念にも縛られがち。赤ちゃんがどのように育っのかということも間接的な情報でしか知らず、発達の流れの中でその時期何が一番大切なことなのか、わからないのです。

 そんな今の母親たちに対して、子どもの発達の道筋を理解できるような講座や、子どもだけでなく、母親自身も快適に育児をするヒントとなる講座がもっと公の機関で開かれるべきではないでしょうか。母親を追い込むような情報を与えるのではなく、育児に自信をもてるような様々な母親支援を、社会全体が真剣に考えてほしいと思います。

 

■ストレスを、プラスのストレスに

 育児の悩みのない人はいないでしょう。現代社会の中でストレスを感じるのは当然。要はそのストレスに飲みこまれるか、それに負けずにバネにしてプラスの方向に転換していけるか、です。

 家が狭くてイライラするだけでなく、いっか自分たちで広い家をもとうと気持ちを切り替えていったり、「苦労は買ってでもしろ」という言葉のように、今の苦労は自分の器を大きくするものと考えたり。ストレスを感じる母親だけが悪いのではなく、母親をそうさせている社会そのものに目を向けていくことも大切なのではないでしょうか。

 人間関係でおこるストレスは、人間関係の中で解消していくのがよいようです。夫であれ友人であれ、おしゃべりする相手をもっていますか。人に話すだけで不思議と自分の中のモヤモヤが消えていくはずです。知っている人にはどうしても本音が言えない、という人は、公共や民間の無料電話相談を利用してみるのも手。経験豊かな相談員が、きっと適切なアドバイスをしてくれるでしょう。  

 

横浜市戸塚保健所の指導係長、大場エミ氏に、育児ストレスに陥らないためのアドバイスをいただきました。

 「育児は一生かかってゆっくりとやるぐらいのつもりで。結果がすぐ出るとは思わないで子育てした方がいいと思います。怒る時は怒って、かわいいと思う時は抱きしめて、その時の親の感情を豊かに表現していいのです。

 親にとって子どもはかけがえのないものという事さえしっかりと伝えていれば大丈夫。親には親の、子には子の人格があり、普段からその人格を認めて、こうあって欲しいと葛藤するよりも、ありのままを受け入れることです。

育児は不安と安定の繰り返し。悩んで苦しんであたりまえなのです。一人で悩まないで、適切な相談相手を見つけてほしいですね。

 

● ストレス解消法 ●

だれでも、イライラが募れば、自然と解消する手段を取っていることでしょう。
自分に合った方法が見つかるまで、いろいろ試してみてはいかが。

・夫や実家に子どもを預かってもらい、自分自身のために時間を使う。
・とりあえず、「まっ、いいか」と口に出して言ってみたり、別の部屋に行って子どもとの距離をとり、冷静になってみる。
・友人に会って、一緒にお茶やお菓子をつまみながら楽しいおしゃべりタイムを持つ。
・部屋の模様替えや掃除を徹底的にする。
・ショッピングをして(なるべく自分のものを買う)、気を晴らす。
・スポーツで体を動かしてリフレッシュする。
・子どもが寝た後の夫婦の会話を楽しむ。

基本的に落ち込んでいた気分をサッパリさせ、また頑張ろうという気になれる、自分なりの「元気の素」をもつことですね。

 

子育て情報誌「コミュニケーション」 1994年
  Vol.2(子育て協会発行 )より転載
引用、他への転載はご遠慮ください。
 

 

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