子育て協会編集室&ゆめこびと 

一人で子育てしていませんか

 休日に街や公園で見かけるお父さん達。楽しそうに子どもと遊んでいたり、中には抱っこベルトで赤ちゃんを抱いているお父さんもたまに見かけます。…最近の父親は昔と比べるとずいぶん進歩したなあ〜と表向きはよく見えますが…さてさて、その実態は?? 

 「仕事が忙しくて帰ってくるのは夜中。平日は全く子どもと会わないし、週末は寝てばかり。我が家は精神的母子家庭だわ」

 「そういえば、夫婦らしい会話ってほとんどしていない」

 「なんで私ばかりが子どもの世話だけしているの!」…お父さんに対する不満があちこちから沸き上がってきそうです。  お母さんは子育ての負担を一手に担っています。お父さんはどのように育児に関わればいいのでしょうか。今ここでお父さんと一緒に子育てする意味を考え直してみませんか。

 なぜ、今お父さんの出番なのか

 考えてみれば、私たちの父親世代は、全くといっていい程、子育てに参加していませんでした。戦後日本の高度経済成長時代を真っ向から背負っていた世代。とても家庭を振り返る余裕もなければ、振り返れという社会風潮もない。我が子を抱いたことも、オムツをかえたこともないまま孫と対面し、面食らったおじいちゃんは多いはずです。  ところがその頃は家の中に祖父母や親戚、兄弟がいたり、近所のつながりが密でした。父親が子どもに直接関わらなくても、肩代わりしてくれる人々がいろいろいたのです。  核家族化し、転勤も頻繁で、親や親戚が近くにいるわけでもない状況では、とても母親一人の細腕(?)で子育てすべてを担えるはずはありません。今ほどお父さんの登場が不可欠な時代はない、と言えるでしょう。折しも、バブル崩壊で残業カット、接待カットのご時勢。家庭回帰が叫ばれる今日この頃、お父さんを家庭に呼び戻すチャンス到来です。

 

 

子どもからみたお父さん

 子どもは何といっても笑顔のお父さんが好き。一緒に出かける時、遊ぶ時、お父さんはきっとニコニコしているからでしょうね。

 県内の保育園児(4,5歳児)50人に、「お父さんにしてほしいこと」を聞いた所、だっこや肩車などのスキンシップが大好きでくすぐられたりするのも好き。男の子はサッカーや野球を一緒にしてほしいという昔ながらの希望が多く、女の子はお絵かきやお人形遊びで一緒に遊びたいようです。お父さんと一緒ならどこかへ出かけるばかりでなく折り紙やゲームなどで遊びたいと言っています。

  中にはお金をもらいたいとか、何かを買ってもらいたいという子もいて、普段の家庭での親子の接し方に違いがあるようです。
  どこかの遊園地等へ出かけるのではなく、近くの公園や家の中でもいいからとにかく「お父さんと一緒」に遊ぶという、ふれあいそのものを望んでいるように思われます。

 

お母さんからみたお父さん

  父親の育児参加についてお母さん達と話し合っていると、「うちの夫は子どもには無関心で」「ほとんど不在で」とこぼすお母さんの多い中、「私より面倒見がいい」「マメで世話焼き」と、子どもと積極的に関わっているお父さんも増えているようです。「無関心・不在パパ(家に不在という意味だけでなく、家にいても育児は妻任せで心理的に存在感のない父親のこと)」と「マイホーム・マメパパ」の二つに分極化しているといえます。

  県内の保育園、幼稚園のお母さん100人にアンケートをお願いした結果、父子の接触時間が長いほどお母さんの満足度は高いのですが、長くても子どもと遊ぶのがあまり好きでない父親の場合は、不満。逆に接触時間が短くても、遊ぶのが大好きな父親ならまあ満足と答えるお母さんが多いようです。接触時間と内容のバランスが問題なのです。

  一方、夫の育児協力に対する満足度が低い家庭を見ると、夫婦の会話の時間も少ないようです。平均的には15〜30分と決して長くありませんが、夫婦の会話と家庭生活の満足度は相関すると言えそうです。

 

まずは、お母さんの声に耳を傾けて

  子どもと遊ぶのが上手なお父さんと、へたなお父さんがいます。中には毎日短い時間でも子どもとうまく会話できるお父さんもいれば、接する時間は長くても要領を得ないお父さんもいるでしょう。お父さんのタイプは様々です。家族と接する時間の長さだけでよその家と比較したり、巷で取りざたされている理想の父親像に振り回されてばかりでは、きりがないのでは。  "我が家のお父さんだからこそできる関わり"が大切なのではないでしょうか。それにはまず、何はさておき我が家のお母さんの話に耳を傾けることです。直接子育てに参加できなくても気持ちの面で、すなわち心の中で一緒に子育てをしているという安心感を与えてあげることで、どんなに母親は支えられることでしょう。

家庭の中で、両性の役割をバランス良く

 ほとんどの家庭がサラリーマン化している現在、子どもは父親の働いている姿を見ることができなくなりました。収入を得て一家を支えていても、給料は銀行振り込み。父親の重みや存在感はどんどん薄くなりつつあります。非行や登校拒否などの問題を示す子ども達に共通していることは、「父親の心理的不在」との指摘もあります。

  また父親が子どもを甘やかすようになり、母親化している傾向も。父親だからこそ教えられる社会性や人間としてのたくましさが伝わらず、夫婦揃って過剰期待や過干渉になるケースも多いようです。父親だから父役割を、母親だからこそ母役割をというのではなく、必要に応じて子どもをつき放したり、十分に甘えさせ包みこむ役割を夫婦でその都度話し合い、両性の役割をバランス良く子どもに満たすことが大切ではないでしょうか。母子家庭であっても、母親が両方の役割を果たせていれば全く問題ないと言われています。いつも甘えさせてばかりとか厳しく叱ってばかりではなく、両親がやさしさと強さのどちらの役割も担える人間性をもつことが必要だと言えるでしょう。それには夫婦のコミュニケーションが大切なのは言うまでもありません。

親子の会話以前に、夫婦の会話を

 出産という決定打がないためか、男性には親になる自覚が少ないと同時に、いい父親になるためのしつけというものもされていません。そして父親として父親同士で語る機会などもほとんどないですよね。考えてみればお父さん達、いかに父親になるべきか暗中模索しているのかもしれません。

  そんなお父さんたちをどのように活躍させてあげるかは、やはりお母さんたちの腕の見せ所。役者をうまく生かせるかどうかは演出家次第です。

  神奈川県中央児童相談所長の大久保稔氏にコメントをいただきました。「父親の育児参加のためには、労働時間の短縮や父親の育児休業などの社会制度の改善が必要です。一方、それだけではなく、例え母親の方の負担が多くても、父親が母親の悩み苦しみを共感し、理解し、支える態度であれば、少なくとも心理的な負担感は減るでしょうし、父親は自ら育児にかかわろうとするでしょう」。

  アンケートにも現れているように、親子関係云々を言う前に、夫婦関係が問われています。父と子の会話の前に夫婦の会話。子どもの話だけでなく、他愛ない、くだらない話でも楽しくできる二人でいたいものですね。

 

アイデア 我が家ではこんなふうに

Case1 30分効果

 夫は子どもと遊ぶのがうまくないんです。「子どもと遊んで」というとすごくプレッシャーを感じるようです。そこで漠然と遊んでと頼むのではなく、「30分だけ遊んで」とか「〜時まで遊んで」と時間を区切ってお願いしてみました。するとその時間内は一気に集中して遊んでくれるようになりました。

Case2 こたつ効果

 子どもが大きくなって子ども部屋にこもるようになり、夫はTVの前にいつも寝転がり私は台所で家事…と家族がバラバラの場所にいるようになってしまいました。何とか皆が自然に集まるようにと、"こたつ"を購入してみました。すると何となく皆こたつに集まるようになり、それぞれの居場所が集中して、コミュニケーションもとれるように。問題はこれから夏に向かってどうしよう…。

Case3 お茶碗効果

 いつも帰宅が深夜の夫。夕飯を一緒になんて皆無に等しく、食卓に父親の存在感がなかったのですが、これではいけないと思い、いなくてもお茶碗とお箸を並べるようにしました。そして「お父さん、お先にいただきますね」と声も一言。それが効を奏したのかわかりませんが、だんだん子どもと父親が接近してきたように思います。

Case4 発表会効果

 普段は忙しくてなかなか話ができないのですが、主人がたまに早く帰宅した時は、夕飯の時に今日一日の出来事で楽しかったことを発表するようにしています。まず主人が発表し、次に私、それから子どもたち。お互いの生活が少しでもわかるし、発表することで考えをまとめる力もついてきたようです。

Case5 メモ効果

 子育ての講演会に参加し、今まで不満だらけだった夫のいい所を10分間で書けるだけ書く"良い所探しゲーム"をしてみてはと教えられました。短所は簡単に見えても長所は努力しないと見えないものです。あれこれ考えているうちに、日頃自分は夫に対して要求ばかりしてるんじゃないかと思うようになりました。自分の悩みを人のせいにして、人の良い所を見ようとしないことを反省しています。

読者の声

 

博史さんへ  いつもお仕事ご苦労さま。結婚して早くも11年。3人の子ども(小4、小1、4才)を、神様からあずかることができました。あなたが帰ってくると、お話や、抱っこの順番を待ったりと大変です。3人それぞれの話を聞くのに、夜遅くまでお蒲団の中で会話をしていますね。私には話してくれない事でも、あなたには話しているようです。感謝しています。これからも宣しくお願いします。(宜子)

 

 

 穏やかで優しい御主人様。私はあなたにいつも感謝しています。それはたとえば、子どものことで私が困ったり、怒ったりイライラしている時、「こういう風に考えてごらん」とか、「子どもを信頼しなくては」とか、自信を持ってすべてを受け入れているその姿勢に、私の頭も次第に冷静になり、なんだかんだと励まされ、元気になってまた明日、という風になるからです。願わくはもう少し早く帰って来てください。体を大事にしてください。これから先も、ずっと宣しくお願いするのですから。(れい子)

 

頑固にくそまじめをミックスして絵に描いたら、出来上がるのがうちのお父さん。近所でも評判のまじめ人間だけど、怒ったときは後光も放つ頑固さ。  子ども達も私に似て、性格の良い子に育っていると思ったのも昔の話。今じゃやっぱり、あなたの子でもあったのだと思い知らされる息子の頑固さ。あなたの優しさだけを受け継いでくれたらよかったのにね。お父さん、頑固さもほどほどに。ストレスの原因にもなっていると、妻は分析しています。(節子)

 

 ある日の午後、夫と10才の長男が、肩を並べて、ボブの絵画教室を見ている。その和やかな会話を聞きながら、これからは、"父親の出番"、そう思った。母として、ちょっぴり、寂しくもあり、うれしくもあり、まだまだ、手の掛かる次男の、あどけない寝顔を見ながら、何とも言えぬ、いとおしさでいっぱいになった。  あと、何年かしたら…。夫の背に、思わず、「パパ、お願いね」と、つぶやいてしまった私である。(嘉江子)

 

 

 体力で押し切ってきた子育でも、独立途上の子ども達と、頭で勝負する時期になり、私の浅知恵では惨敗を喫することになってきました。そこで、夫を強引に味方に引き込んで以来、会話も増え、ボールを取り損ねる事も減りました。相手への理解力は深まっても、時と場合によっては、一言申し上げたいことはまだあります。それでも、子育てに集中できる環境においていただいた幸せを噛みしめつつ皇后陛下より大きな感謝状をさし上げたいと、思っております。(久恵)

 

 

 つい最近、知人から車を譲り受け、夫は10年来、私は15年来のぺーパードライバーを返上しようと土、日の早朝に練習を始めました。車がマニュアル仕様のため汗と笑い(ヒーターをつけ忘れても汗だくだくの夫と、その横でエンストを起こしては後続のドライバーに精一杯の愛想を振りまく私)の連続でしたが、久し振りに二人だけの時間と話題を持つことができました。(かがり)

 

「コミュニケーション」第1号(1994年)子育て協会より 転載 

▲上に戻る