■性への出会い 2

 休み時間には手をつないで歩き、廊下の片隅では互いにもたれかかるカップル。そんな様子も日常的になりました。敬子と竜也も例外ではありません。

  学期末の個人面談。敬子の時は、廊下に竜也が待っていました。成績などの話は簡単にすませ、敬子の隣に竜也も呼び寄せます。

  自己チュー的で豪放らいらくな竜也。少し気が強くて、意地っぱりの敬子。こんなペアは、回りくどい言い草は嫌われるのでストレート表現で迫ります。

  「どうだぃ、このごろちゃんと仲良くやっている?」といつも通りの話。

  雑談の後、おもむろに竜也に「財布持ってる? ちょっと見せてよ」。多くのカードが詰まっている財布を見せながら「なんだよ、先生、金なんかねぇよ…」。「いいから、見せてみなよ」。

 そして単刀直入に、「竜也、コンドームはどこに入れているんだい!?」

「使っているよ、大丈夫だよ。」

「じゃあどこに持っているんだぃ、見せてみなよ、財布には入れてないのか」

「いいじゃん、先生そんなんは…」

この後、「竜也、ちゃんと敬子の気持ちを聞いているかい」

「大丈夫だよ、わかってるよ」

「じゃあ、敬子が生理の時とか、痛がってるときとか無理強いしてないか」

それまでうつむき加減だった敬子は、顔を上げて強い口調で言い始めました。

「ほら!やっぱそうじゃん、先生だって言ってるじゃん」

「こうなんだからと言ったって、聞いてくれないんだよ先生…」

旗色悪くなった竜也はどうしたものかと、もじもじして話をそらそうとします。

「分かるとかじゃなくて、どんな気持ちになるかなんだよ」。竜也は、「もういいよ先生」と話しを切り上げようと必死になるのでした。

  若者達は、内部からの衝動に突き動かされるように激しく行動化しますが、異性への思いやりや共感性は意外と少ない場合が珍しくありません。

  M子(17才)の彼氏は、バイト先で知り合った大学生です。アパートに出入りしているうちに妊娠し、泣く泣く中絶。彼女は避妊を求めることもできず、彼まかせのSEXはいつもコンドーム無しでした。

  「SEXだって、断ったっていいんだよ。」「えっ、本当?」と信じられない顔です。様々な愛の形があり、彼にこんなふうにいってごらんと言っても、最後まで言えなかったのでした。

  相手のことは分かると言います。けれども、多くは自分の思いこみが強い同情意識です。「…と思っているようだ」「そう言うことは分かる」「俺もそう思う」と。これでは自分のことを、こう思っていてくれているだろうと相手に期待してしまいます。こうした関係で、女生徒は異性への適応過剰というストレスを抱え、男子生徒は共感性のない自己主張になかなか気づくことができないのです。竜也も例外ではありません。

  竜也と敬子の関係は1年近くで終わります。交際が数ヶ月、場合によっては極めて短期間で次の相手へと変わる子もいます。彼らの恋愛は、お互いの人格を高め合う交際というよりも、傷つけないようにカバーし合っている弱さや歪(いびつ)さが感じられる場合があります。自分のことを肯定的に受け入れてくれる間だけの関係であったり、自分を甘えさせてくれる間だけの関係ですから、好きになるのも早いけれど、別れるのも早いのでしょう。

  竜也と同じような話題は極めて限られた生徒としかできませんが、廊下で会うカップルに「この頃どう?」と幾度となく声をかけ、機会を伺うのは私の密かな楽しみになっています。

2000/11/10