気持ち・感情を表現できない子どもたち

■「気持ち・感情を表現できない子どもたち」

■今の子どもたち

 昔に比べて今の子ども達の大きな特徴が二つ考えられます。

一つ目は「幼くなった」こと。かつての高校生は自立心があり、先生が手伝うことを嫌がり自分たちでやろうとしたものです。現在は手取り足取りで教えてもらうことが当たり前になりました。

 

二つ目は「友達つきあいがヘタ」。人間関係がうまくできず、友達ができても些細なことでトラブルになりやすいのです。これらは年齢相応の成熟をしていないということでしょう。例を少し示してみましょう。

 

例1  A子はB男とアニメの話になります。数日後にB男がアニメのDVDを貸すといって持ってきてくれました。A子が頼んだわけでもなくB男の一方的な好意です。A子は持ち帰って母に話しをすると、母親は変なDVDじゃないかと心配で一緒に見たといいます。普通のアニメでしたが貸してくれたので最後まで見たのです。返すと次に頼みもしないのに貸してくれる。こうしたことがしばらく続きA子は、迷惑とも言えずとても困り一時不登校気味になってしまいました。

 

例2  あるグループのミーティング。司会の子が「おまえら聞けよ」「おまえら、○○〜しなよ」と議事を進行しています。同じ学年同士の子どもたちです。司会の子はヤンキーでもなく、普段は静かで目立たない子です。「おまえ」は失礼な言い方ではないかと問いかけても、その意味がよく分からないようです。終了後、私が参加者に「彼はいつもそういう言い方?」「はい」「最初に聞いたときどう思った?いやだと思わなかった?」「いい気分じゃなかったけど慣れました。あいついつもそうだから」

 

■自己内コミュニケーション

 

  これらはとても些細な例です。子ども達の関係は、言葉や感情のやりとりが、的外れであったり一方的なやりとりになることがとても多いのです。ある時生徒から「普通に話すってどう話せばいいんですか」と聞かれたことがあります。自分の思っていること、話すことか相手にどのように受け取られているか、分からなくなって不安になったようです。

 

  子ども達は臨機応変の対応の仕方や「相手の気持ちをくみ取ることが苦手」になっているのです。このため友達関係がヘタで安定した関係にはなりません。スルーされた、シカトされた、傷ついた、陰口を言われたとなり心を閉ざし友達関係に悩んでいるのです。

  友達との関係がうまくいかず気持ちを推しはかったり、共感することが苦手な子は、自分中心でおさまっているわけではありません。相手の気持ちに共感し響きあえない子どもは「自分の感情や気持ちをくみ取ることも苦手」な場合が多いのです。自己内コミュニケーションというのでしょうか、自分自身との感情と向き合い対話する関係もうまくいっていません。

 

  子どもに「どのように感じているか、思ったのか」を聞いていると、自分の気持ちや感情をうまく表現できず「キレた、なんだかそうなった、あいつがそうしたから」というようなその場しのぎの表現が多く、怒りの感情があっても気持ちを適切に表現できないことがよくあるのです。

 

  自分の感情をくみ取れず適切に表現できないから相手にうまく伝わらず、伝える方法も浮かびません。ですからコミュニケーションが、ちぐはぐになり一方的になりやすいのです。

 

■人間関係の練習を

 

  自己を理解することは他者の理解につながります。自分の感情や気持ちを受け止めてもらう経験を積み重ねることによって、自己理解や人の感情に響きあう感性が磨かれていくのだと思います。豊かな感情の表現できるようにくつろいだ家庭の雰囲気作りを心がけることが望まれます。一時的に親の感情を害することがあっても、子どもがのびのびと自己表現できるといいのです。

  佐々木正美先生は「思春期までは人間関係の質よりも量です」とおっしゃいます。友人との遊びは人間関係の練習の場です。思春期までに多くの人と交流し、相手や自分の気持ちをくみ取る機会や時間を持てるようになってもらいたいものです。

 

 高橋健雄

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