青年期の風景2

 「あれ、また増えた?」「うん」

 A子の両耳には、彩り鮮やかなピアスが4個ずつついて一際目立っている。

 「どうやってつけるの。」

 「氷で15分から20分くらいずーっと冷やして、感触がなくなってきたら、オキシドールで消毒した安全ピンをブスッと。」

 「ブスッと! 痛くないの?」

 「ぜーんぜん」「感触がなくなっているからあまり痛くない。それから消毒したピアスをつけるの。」

 「今ちょっと心配なのは、金属アレルギー、腕がガサガサしてきていて。純金だと大丈夫らしいけど、今、お金がないから。」

 「ホントは鼻にやりたいんだけど、バイトでやれないの。」

 前はやってたよと鼻を指すが、あまり後が目立たないのが不思議。

 「唇ピアスや眉毛にもやってたけど、眉毛は変な格好についちゃったからすぐにやめちゃった。へそだしルックがはやったときは、おへその周りにもやったことあるけど、あれは服でこすれて痛いからやめたんだ。」

 「最初は怖くなかった?」

 「最初は中三のとき。ピアサーでブスッとやったらもう慣れちゃった。最初は怖かったけど、一回ブスッてやったらもう大丈夫だよね。ピアサーの方が音がして怖いよね(笑)」

 「整形外科には行かないの?」「コワーイ(笑)」

 8個のピアスは当たって音が鳴りそうだ。

 ところでA子は、就寝前のベッドで一人きりの時に、時々股の皮膚表面をカッターナイフで薄く切ることがある。ヒリヒリした痛みがなんともいえないと言う。

 「どんなときに切るの?」「なんか淋しいときに」とストレートに返事。私はちょっと詰まって、すぐには返答できず「そう・・・」。 もっと聞いてと言わんばかりの様子。痛いって本当なんだと実感して、眠りにつくようだ。生きている安心感があるのだろうか。

 彼女は、中学でいじめを受け一時不登校に。このような辛い時期に、行きたくない、いやだ、苦しいという気持ちを十分に受け止めてくれる親ではなかったようだ。多くは語らないが、A子には家族に支えられているという感情が少ない。

 高校入学の頃、休日には渋谷をブラブラして時間をつぶしていた。最近はバンド仲間ができ、スタジオを借りるためにアルバイトに精を出していて日常生活も安定している。友だちが、ボーカルで認めてくれたのがとても嬉しいらしい。

 時々「新しいピアスだね」そう言って声をかけると、「先生、わかった?」と嬉しそうな返事。いじめでシカト(無視)されたこともあるA子には、会話の糸口にぴったりだ。気だるい表情から、とても柔和になるので驚いてしまう。「今度ねストリートライブするんだ」「すごいね、どこで?」「横浜駅の前で・・・。」

 ピアスピアスした子は、皆がA子のようではないだろう。けれどもピアス は 「私に話しかけて来て」というシグナルのように私は感じている。 

2000/5/28 高橋健雄 ©