■思春期・青年期の時期

青年期までに、乳幼児期から学童期まで
様々な経験が、順に層をなすように積み重ねられてきます。乳児期は赤、幼児期は黄色・・・と。 青年期はそれがかき回されて、さらにその上に自分なりの色が積み重ねられていきます。この自分の色を作りあげる時期が青年期の時期でしょう。
成人期を迎える時には新しい新たな色が形成される。それが青年期(思春期)です。 この色は、いわゆるアイデンティティの形成ということになるのでしょうか。
母親や父親、近隣の人や教師などのから取り入れてきた価値観や規則、規範を問い直し、自分なりのものを作りあげていく時期になります。つまり自我の形成期になる時期です。このため、それまでの価値観と合わずぶつかり合います。それが反抗的に見えるため、反抗期と呼ばれることもあるわけです。
■思春期・青年期の特色
青年前期(思春期)の頃は、甘えたいけれど甘えられない、いわゆる「自立と依存の葛藤の時期」といえるでしょう。ですから、この時期は不安定な状況を呈することもあります。青年前期の特徴をあげてみましょう。
彼らの内心には、対象のはっきりしない漠然とした不安があるようです。「自分は男や女として、一人前にやっていけるのだろうか」「大人にはなりたくない」という生きていくことへの根幹にかかわるような潜在的な不安が、特に意識はしていなくても内在しています。このことは、時として将来を考えるより、現在形しか価値を置かない生き方、フリーター予備軍につながる怖れを抱えていることになっているのです。
また「感情が不安定」で過敏な反応を示します。小さなことで傷つき落ち込み、時として劣等感に陥ります。親や教師など大人への親愛感は、ささいなことで侮蔑感へとなります。孤独を求めている反面、仲間と群れたがるのですが、仲間との一体的な幸福感情が、友の一言で不幸のどん底へと変わります。自己の価値観ができあがっていないこともあり、感情が揺れ動くのです。
また次のようにどちらが本心?と思える感情があります。
下校時に学校の昇降口にいると、女生徒が数人立ち話しています。やがて立ち去りました。
しばらくするとA子が来ます。 「先生、ここにB子いなかった?」
「もう帰ったよ。」
「えっー、待ち合わせしてたのに!」
「先生、どこに行ったからわかんない。どこに行くって言ってた?」と真剣に問いつめてきます。
「わかんないなぁ〜。それより、どこに行くって聞いて、A子は本当のこと教えてくれる?」
一瞬、言葉を詰まらせながら。
「そうだね、先生にはホントのこと言わないよね。」
こうして、なんともいえない表情で、帰っていったのです。
頼りたいけれど頼りにしたくない。本当は好きなんだけれど嫌いといい、言いたいけれど言いたくない、すごいなぁと内心は尊敬するけれど、なんだこんなものと軽蔑する言葉が出る。本当は関心があるのに、「べっにぃ」と気がないふりをする。このような表現は両価性(アンビバレント)といわれる感情です。
子どもたちは、自己中といわれるように、主観的で自己中心的な物の考え方をすることもあり、他者からの修正が受けつけにくい時期といえるでしょう。これは感情の不安定さを支えるようになってガードしているのです。
このような特徴のある青年前期から中期には、揺れ動く心をささえる親子関係が良好でないと、ますます心は不安定になります。同時に夫婦の絆の質が問われる時期でもあるのです。