青年期の風景1

 

■思春期をめぐる時期                  

  朝、天気が悪くてお母さんが、

「雨が降りそうだから、傘を持っていきなさい」すると「そんなのいらねぇよ」

「そろそろ出かけないと、遅刻するよ」

「うるせぇな」と返ってくる。

 このような家庭の様子をよく聞きますが、学校でも同様の光景が見られます。授業中に廊下でたむろしている生徒に教室に入るように注意すると、「うるせぇんだょ」と口答え。

 「何を考えているかさっぱり分からない。何でも言うことを聞いてくれるいい子だったのに、別人みたいだ。」 何か言えば、「わかってんだよ」「むかつく」あるいは何も応えないというような日常生活で、困惑している父母も多いようです。

 さて幼児期から小学校の時期はコップに層をなすように経験が順に積まれていく期間。中学から高校の青年(思春)期は、それがかき回され、再構成される時期といわれます。それまでの親や教師などかかわりの深かった人から取り入れた価値観や規則を問い直し、自分なりの物を作り上げていく時期ということでしょう。

 ですから、この時期は親から何か言われることを大変いやがります。よく親に向かっていう言葉。「うるさいな!」「べつにぃ」と。これは、親の価値観を押しつけるなということでしょう。子どもは、特に意識はしていなくても、心の奥底で自分の行動を支配し、監視する「うるさいやつ」と感じているのです。

 たび重なる校内の喫煙で注意を受けたI子が、教員の説諭から逃げようとしたことを、後で次のように言っています。

 「人から指摘されるのがいやだ」「自分でわかっているんだけど、自分でどうしていいかわからないから、むかつく」

 このような子ども達の口調は、思春期の揺れる心を見事に表現しているように思えます。

 ところで「私の子どもは学校のことはよく話してくれます。部活のことや友達のこともそれはよく話すんです。うちの子はちょっと変でしょうか。」

 このように心配してお話するお母さんもいます。

 思春期は親離れや反抗期で、自立の時期だから学校のことは親には話さなくなると言う見方があります。このような観点は、一面的なもので決してそうではありません。

 何でも自分からあれこれ話さなくても、問いかければ、自分なりに考えて応答できるのが思春期でもあるのです。そのときに、どのように応えようか、と整理しながら話していくのが思春期の時期です。幼児期のように脈絡もなく、出来事を話すのとは違って、少しずつ段取りを考えながら生活面や学習面のことそして進路も話しあえるものです。子どもと親との間に基本的な信頼感が培われていると、思春期になってもその時期に応じた会話ができるようになるのです。

 「別にぃ」「知らねぇよ」「うるせぇ…」と家庭で語る子ども達は、家庭の中でのコミュニケーションが必ずしも子どもの求めるものではなかったか、あるいは干渉やお節介のしすぎで子どもの求める声に応えていなかった可能性があるのです。

 コミュニケーションは会話だけではありません。子どものしぐさ、表情、雰囲気など声にならない声を傾聴し十分に受け止めることで、思春期には豊かな会話が生まれるのです。

2000/5/28 高橋健雄 ©