■ 万引き、窃盗−その理解と対応

 

■ 万引き、窃盗−その基本的理解と対応 ■

万引きの連絡で、商店へ子どもの引き取りと謝罪に行くことがあります。基本的には、保護者がお店に行くのが普通ですが親に連絡が取れないことが多く学校へ電話が来るのです。店の奥の商品管理室とかに身体を小さくしている子ども。なにが彼らを万引きへと導くのでしょうか。

くり返し万引きする子どもたちは、中学時代から何度も繰り返していた子も珍しくありません。

きっかけは、「友達と一緒で断れなかった」とか、「スリルを楽しむため」とか「好奇心」とか言われます。また、「他の子もしているから」などといいわけをしますが、これらはウソの場合もあります。

万引き(パクリ)が悪いことはもちろん知っています。口紅、ヘアケア商品などたわいもない品物が多く、十分なお金を持っていても、心の中に生じた「ほしい」「見ていないようだ」という一瞬の衝動や心の動きを、コントロールすることができないのです。ですから、「万引きは悪いことだ」といくら説教しても、くり返しする人がいます。

なぜこのような行為に走るのでしょうか。

再犯性の万引きは、品物を盗んでいるのではなく、「愛情を盗んでいる行為」(A.S.ニイル)といわれることがあります。この衝動の奥底には、次のような背景が考えられています。

幼児期から親とのかかわりが希薄な場合や、友達関係そして学校での教師とのかかわりが希薄であったりする場合が比較的多いようです。彼らと接するとどこか寂しさの雰囲気を伝えていることが多く、またどこか「心もとなさ」を醸し出しています。

子どもにとっては、自分が本当に、親に愛してもらっているか確信が持てない子どもに万引きが多いのです。普段は意識していないけれど、親の愛情を求める心が、無意識のうちに万引きという行為に走らせることになる。つまり、言葉にうまく言い表せないような「さびしさ」があるのです。

たとえば、どうして万引きをするようなことをしたのか、家庭に対する気持ちはどんなだったと、よく聞くと「お母さんに恥をかかせたかった」「仕返しをしたかった」と言うことがあるのです。

このような、心の奥底にあるものはふだんは自覚していることはありません。人の物を盗ってはいけないことは、もちろん知っています。ではなぜ盗ってしまうのかと問われても、なぜなのか本人も説明できないことが多いように思えます。

その時の「状況」と「つじつま合わせの理由」は語れますが、本人もいったいなぜこんなことをしてしまったのか「わからない」のが本音なのです。それを、反省文を書かせたりして無理に語らせることは、内面を見つめるきっかけをふさぎ、表層的な反省にとどめることになりかねません。

子どもの、生活歴をふりかえると、両親が共稼ぎで忙しく、その子にほとんどかかわってなかったり、親が離婚して働いて生活することに精一杯で、子どもまでなかなか面倒みれなかったりする場合があります。もちろん、そのような家庭環境の子どもがみんなそうするわけではありません。

親にとってみれば、小さいときから、人の物を取ってはいけない、人に迷惑をかけてはいけない、と注意して話しをしてきているのです。けれども、大事なことは親のしつけ(要求)ばかり言っていても、子どもには伝わらないのです。子どもは、「私の気持ちをくみ取ってくれた」という思いが実感できてはじめて、大人の伝えるものをくみ取ることでできるようになるのです。

父母からみたら、子どものことを、大事・大切に思っているけれど、どこか父母のやり方で大切に思わせないやり方があるんだろうか。

例えば、このことを聞いて見たらどうでしょうか。

子どもの方では、注意されるけれどよく分からない。注意されることで、親からの強い感情を向けられることが、子どもにとっては、その時、親と子の間が非常に感情的に近くなるときがあるのです。

このような場合には、親の意図が伝わらないときがあります。これはとっても残念なことです。

父母にとっては「あなたは、とっても大切なんだけれど、どうすれば、もっと伝わるか教えてほしい」「あなたの考え聞かせてもらいたい」と子どもを責めずに、親の悲しみや愛情を正直に表現することでしょう。子どもにとっては、とっても安心すると同時に今までの行動を繰り返さない上での、ブレーキとして働くのです。

 親がこのように伝えたとしても、子どもは、その場ではとまどってしまって、自分のことを何も言えない。頭の中が真っ白になってしまう。「僕は、こう思っている」ということを表現するのが苦手な子がいます。

「いつでも、思いついたときに、言ってきてちょうだい。そうすれば、うれしいから」と、子どもが思いついたときに言ってきてくれることを待つんだ。ということを伝えることが大事になります。

するとその時言わなかったから、言えないんだ。今度は、長い時間の中で、思いついたとき言えばいいんだ。今までより、父母に自分の気持ちを開けるようになるのです。

子どもが、自分の気持ちを開いてくれたら、ああそうなんだ、そう思っていたんだねということを伝えてあげましょう。子どもの気持ちに沿って共感していきたいものです。子どもが「自分のことを分かってくれた」と思うところから大人の期待に沿おうという気持ちが育ってようになります。

お金を取ることと、自分が親から愛されているか確認するのは違うことのように思えますが、実はそうではありません。子どもは「自分が信頼されているんだ」と言う安心感を得ることによって、善悪の基準が育っていくのです。この信頼感が子どもの中に十分に育まれていないかぎり、小言や注意や説教は子どもの心に響きません。

ですから、「反省しなさい」と言って、「もうしない」と約束しても、あまり効果はありません。

何度失敗しても、これからはやめようね。ということを伝えて、その時、許してあげる。それと同時にその子が言いたいこと、伝えたいことをきちっと表現できるような、またそれを受け取れるような家庭内のルートが確保されていけば、ほぼ改善されていき、子どもは安定していきます。子どもが自分の気持ちを押さえなくてもいい、家庭内の雰囲気作りに心がけてもらいたいものです。

子どもにとっては、とっても安心すると同時に今までの行動を繰り返さない上での、ブレーキとして働くようになるのです。

なお、万引きは、「少額だし、先生がお店に行ってくれたから」「また迷惑をかけるから」などと考えずに、必ずお店に行って謝罪をしていただきたいと思います。両親の社会的かかわり、役割を、子どもはこのようなときにしっかりと学習していくのです。

父母の世間体やこだわりで、ずるずると謝罪を伸ばすことは、子どもを悪くすることはあっても、よくすることはありません。

  なお、グループでの万引きは、「いじめ」や「恐喝」などに合っている場合があります。さらに、非行グループの仲間の結束を強めるための「遊び感覚的な万引き」の場合もあります。

逆に非常に幼くて、単純な出来心の場合もあるのです。これはまさに一過性ととらえられるでしょう。しかし、いじめや非行グループの集団万引きは、後々エスカレートする場合がありますから、うやむやにしないで適切な対処が必要になります。

Copyright 2000 高橋健雄

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