もをありのままに認める

評価を手放す

■ガミガミはなぜいけないの

 

 思春期相談では、幼いときから子どもにガミガミを言ってきた親が少なくありません。箸の持ち方、買い物でのダメ、早くしなさい、片づけなさい、勉強しなさい、ゲームを止めなさい・・・などなど。

 

 お母(父)さんはみんな頑張り屋さんです。仕事の合間にしなければいけないことが山のようにあります。次の予定や段取りのことがありますから、子どもの様子がじれったいと感じるのでしょう。テキパキと物事が動かないと気が済まないお母(父)さんにとって、子どもがグズグズしているとイライラしてしまいます。「いつまで~しているの!」「ちゃんとしなさい!」と子どもをつい叱ってしまいます。

 

 「早く~しなさい」の指示や命令など”叱ることをやめましょう”などといわれます。指示されないとやらない子になる。子どもの意志や意欲を尊重しないので、自主性がなくなる。そして親が子どもをコントロールするだけで、子どもは従うだけだから自立心や意欲は育たないということでしょう。実際、思春期に難しくなった子どもたちの口癖は「面倒くさ~」「だりぃ~」「かったるい」と言って怠惰になります。

 

 私は指示命令について次のようにも感じています。

「早くしなさい」は、親の望みが一方的に伝わるだけでなく「あなたはノロノロしているダメな子」と伝わります。指示や命令の言葉は、できない子、いけない子、しない子とみなしている面があるのです。

 

 小さな子にすれば、まだ親のようにできないと思っているかもしれません。子どもにすれば、「しようと思っているのに」という場合もあります。実際「今、やろうとしていたのに」と応えると「口答えするんじゃない」と怒る親もいます。そして、できたと子どもが思っても、早くできてよかった、よく片付けられたとほめられることがないのです。

 

 指示命令は、しない子、できない子という評価のまなざしで見つめるから子どもは息苦しくなります。すると、自分はダメなんだ、いつもできない自分なんだと自己否定感や無価値感を心の奧底に持ってしまいます。そうして子どもは気力がなくなり、意欲のない引っ込み思案な子になってしまいます。

 

■評価を手放す

 

 何かができているかできないか、遅いか早いか、上手いか下手か、点数が高いか低いか。このような一つの視点で見ていると、心が固まって苦しくなります。なぜなら完璧にできるはずもなく、いつも不満がたまってしまうからです。評価をすると心が重くなり、穏やかで笑顔のある家庭とかけ離れていってしまいます。

 

 進学校に通っていたN君は高校2年生の時に英語のテストが98点でした。ピリオドを一つ付け忘れて減点されたのです。怒った母親はそのテストをリビングに1週間貼り、細かな注意をしていました。その後N君はやる気がなくなり、成績が急降下。定時制高校に転校しましたがほとんど欠席し留年します。結果的に5年間高校に在籍することになりました。卒業後はフリーターになっています。評価に傷ついて意欲を失ってしまったN君のような例は珍しくありません。

 

 相手を評価することは、人を最も傷つけるものの一つです。夫婦喧嘩などで相手から責められて辛くなったことはありませんか。辛いのは評価を下されているからです。評価することはとても攻撃的な感覚だからでしょう。

 

 「泣いている」子どもがいます。泣いているとこちらも気持ちが重くなり、「泣くのを止めなさい」と言いたくなったり、楽しいことに切り替えようと思ったりします。けれども、泣くのはよくないと思うことは、相手に対しての評価をしているということです。その子にとって泣きたいほどの悲しみや辛さがあるのかもしれないのです。

 

 子どもを「できない子」「しない子」と見ること、そして「あなたは○○ね」と裁く心、評価を手放していきましょう。

 

 例えば、遊びに夢中になっていて片付けもしないでいると皮肉を言ったり叱ったりします。そのようなとき、~っておもしろそうだね、と評価しないで子どものしていることを認めます。子どもの今を認め、次に「~しよう」と促すと子どもは否定されたと受け止めませんから、次の行動に移りやすくなります。とりわけ思春期の子どもにとって大切なことは、今してることを認めて欲しい、そう思っていることがとても多いのです。

 

 どんな子どもでもよくなろうとしています。そのプロセスの中にいると認め、評価を手放しましょう。すると私自分が気持ちよく穏やかでいられるようになります。指示命令をする顔は、険しい顔になります。子どもが求めるのは穏やかなお母さんの笑顔です。親の笑顔の下で、子どもは生き生きと動き出し伸びていくことでしょう。

 

高橋健雄

 

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